診断と治療のためのCOPDガイドライン/COPDの病態

COPDガイドライン

定義

タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患である。呼吸機能検査で正常に復すことのない気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に作用することにより起こり、通常は進行性である。臨床的には徐々に生じる労作時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とするが、これらの症状に乏しいこともある。

疫学

  • 世界各国のCOPD の有病率調査では、10%前後とする報告が多い。
  • 2004 年のWHO(世界保健機関) 調査では、COPDは死因の第4位である。
  • NICE study の結果では、日本人のCOPD有病率は8.6%、40 歳以上の約530 万人、70歳以上では約210 万人がCOPDに罹患していると考えられた。
  • わが国ではCOPDは死因の第9 位であり、男女ともに高齢者の割合が高い。

病態生理

  • COPD患者において、労作時呼吸困難の原因となる基本的病態は、気流閉塞と動的肺過膨張である。肺高血圧症の併存も労作時心拍出量の制限により、労作時呼吸困難に関与し得る。これらの病態は患者の症状と重症度を規定する因子であり、その軽減が重要な治療目標になる。
  • 気道粘液の産生増加は咳嗽、喀痰の原因になるが、すべてのCOPD 患者に認められるわけではない。
  • 換気血流不均等は低酸素血症の原因になる。気流閉塞が進行したCOPD患者の一部では、肺胞低換気により高二酸化炭素血症を呈する。
  • COPDでは早期から肺血管病変が認められ、気流閉塞・低酸素血症が進行すると肺高血圧症に至る例もある。また、気流閉塞の進行とは独立して、重症肺高血圧(平均肺動脈圧40mmHg以上)を呈する患者が存在し、生命予後の悪化要因になる。

全身の併存疾患、合併疾患

  • COPDでは喫煙や加齢に伴う併存症が多くみられる。
  • COPDによる全身性の影響(systemic effects)が併存症を誘発すると考えられる。
  • COPDのsystemic effectsとして全身性炎症、栄養障害、骨格筋機能障害、心・血管疾患、骨粗鬆症、抑うつ、糖尿病などがみられる。
  • 併存症を含めた包括的な重症度の評価と管理を行う必要がある。

COPDの全身的影響

  • 全身性炎症:炎症性サイトカインの上昇、CRPの上昇
  • 栄養障害:脂肪量、除脂肪量の減少
  • 骨格筋機能障害:筋量・筋力の低下
  • 心・血管疾患:心筋梗塞、狭心症、脳血管障害
  • 骨粗鬆症:脊椎圧迫骨折
  • 抑うつ
  • 糖尿病
  • 睡眠障害
  • 貧血

COPDの全身性炎症とsystemic effect

COPDの全身性炎症とsystemic effect

肺の合併症

喘息

  • 典型的な場合には喘息とCOPDの鑑別は容易であるが、日常臨床ではどちらとも診断がつけにくい合併例もある。
  • 喘息とCOPDの病態を合併したオーバーラップ症候群は、喘息のないCOPDに比べて重症で予後不良である。

COPDと喘息の鑑別

COPDと喘息の鑑別

肺癌

  • COPDは喫煙とは独立した肺癌の重大な危険因子である。

気腫合併肺線維症

  • 気腫合併肺線維症(CPFE)はCTにて上肺野の気腫と下肺野の線維化を認めることを特徴とする臨床症候群である。
  • 線維化の合併により気流閉塞がマスクされ、初期の診断が遅れることがある。進行するとガス交換障害と肺高血圧症が発現する。
  • COPDもしくは間質性肺炎単独に比べ、肺癌合併が高頻度でみられる。スパイロメトリーの異常が比較的軽度にとどまる割に、肺拡散能力の低下が大きいことが特徴である。

『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第4版』より改編

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